L字の曲がり角を、その形は通れるか
幅1の廊下が直角に曲がっています。形をドラッグして、自分で運んでみてください。壁にぶつかると進めません。自分で描いた形も試せます。通せないと思ったら、自動判定に答えを出させてください。
適当に大きな形を描いて試すと、どうやっても曲がり角で止まります。これには厳密な答えがあります。幅1のL字廊下を通り抜けられる図形の面積は、どんな形をしていても 2.21953166… を超えられません。この値をソファ定数と呼びます。
1966年にレオ・モーザーが問題として提起してから、長いあいだ未解決でした。下からの評価は進みます。半径1の半円なら面積 π/2 ≈ 1.571 で明らかに通ります。1968年にハマーズレイが 2.2074 の形を作り、1992年にガーバーが 2.21953166… の形を作りました。受話器のような形で、境界は直線3本と曲線15本の合計18部品でできています。
詰まったのは上からの評価でした。「これ以上は絶対に無理」という線がなかなか下がらず、ハマーズレイの 2√2 ≈ 2.8284 が長く残りました。2018年にカラスとロミックが計算機を使って 2.37 まで下げます。それでも下限 2.2195 と上限 2.37 のあいだが埋まらない。ガーバーの形が答えだと誰もが思っているのに、証明できない状態が続きました。
2024年11月29日、当時ヨンセ大学の博士研究員だったペク・ジノンが119ページの論文をarXivに投稿し、ガーバーのソファが最適であることを証明したと発表しました。面積の上界を与える関数が凹であることを示し、局所的な最大が大域的な最大でもあると結論づける筋道です。
驚かれたのは、計算機に頼らない論証だったことです。この種の問題は最終的に計算機による膨大な場合分けで片がつくと予想されていました。Scientific Americanは2025年の数学10大成果のひとつに選んでいます。ただし現在も Annals of Mathematics で査読が進行中で、正式受理にはまだ至っていません。
| 年 | 誰が | 何を | 面積 |
|---|---|---|---|
| 古くから | 自明 | 半径1の半円 | 1.5708 |
| 1968 | ハマーズレイ | 下限の構成 | 2.2074 |
| 1968 | ハマーズレイ | 上限 | 2.8284 |
| 1992 | ガーバー | 下限の構成(18部品) | 2.21953 |
| 2018 | カラス・ロミック | 上限(計算機支援) | 2.37 |
| 2024 | ペク・ジノン | ガーバーの最適性を証明(査読中) | 2.21953 |
面積の話とは別に、細長いものには長さの限界があります。太さを無限に細くした棒は、長さ 2√2 ≈ 2.828 までなら曲がれます。斜め45度に構えたときがいちばん厳しく、そこを通せる長さが上限を決めます。このラボの細い棒のプリセットで、2.7は通って2.9で詰まるのを確かめられます。太さがあるほど限界は短くなるので、引っ越しでマットレスが曲がらないのはこのためです。
自動判定は、形の位置と角度を3つの数(横・縦・回転角)の組として扱い、その空間を格子に区切って、壁にぶつからない配置だけをたどれるかどうかを幅優先で探索しています。回転は1周を180分割、位置は0.03刻みです。
格子で探索しているため、ぎりぎりの形では判定を取りこぼすことがあります。いっぽう面積が 2.2195 を超える形については、探索するまでもなく通れないことが証明されているので、その場合は探索せずに答えを返しています。廊下の幅を1、形の座標も同じ単位で扱っています。