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2050年、蕨駅は誰が乗るのか。250mメッシュの人口推計で混雑の中身を見る(2026年9月)

駅の混雑を語るとき、たいてい「何人乗るか」の話になる。ただ、これから起きるのは人数の増減より、乗る人の中身が入れ替わることかもしれない。

国土交通省のオープンデータには、250メートル四方ごとの将来推計人口が2070年まで入っている。年齢は5歳刻みで、市区町村単位よりずっと細かい。これを駅の乗降客数の実測と重ねると、その駅の未来の使われ方がある程度は見える。

蕨駅で試してみた。

使ったデータ

蕨駅を中心に、250メートルメッシュを5枚(駅の真下と東西南北)取った。合わせておよそ780メートル×620メートル、2025年時点で5,816人が住む範囲になる。

乗降客数は国土数値情報の駅別乗降客数で、JR東日本の実測値になる。

乗降客数は、コロナ前の88%で止まっている

まず実測から見る。

蕨駅の乗降客数(人/日・JR東日本) 9万 10万 11万 12万 13万 2011 2015 2019 2020 2023 ピーク 123,052 コロナ 94,952(-22.8%) 107,842

2018年度と2019年度の123,052人がピークで、2020年度に94,952人まで落ちた。22.8%の減少になる。2023年度は107,842人で、ピークの87.6%まで戻った。

まだ15,000人ぶん戻っていない。この差がテレワークの定着によるものなら、今後も埋まらない可能性がある。

総人口はほとんど減らない

次に将来推計を見る。ここからが本題になる。

蕨駅まわり5メッシュの人口構成 2025→2070(推計) 15〜64歳 65歳以上 0〜14歳 0 2,000 4,000 6,000 2025 5,816人 2030 2035 2040 2045 2050 5,613人 2055 2060 2065 2070 5,027人

総人口は2025年の5,816人から2050年に5,613人。25年かけて3.5%しか減らない。2070年でも5,027人で、13.6%減にとどまる。

数字だけ見れば「蕨駅の周りは人口が維持される」という話になる。実際、そういう文脈で語られることも多い。

減るのは、電車に乗る世代だけ

ところが年齢で分けると、まったく違う絵になる。

2025年を100としたときの推移(15〜64歳と65歳以上) 50 75 100 125 150 15〜64歳 65歳〜 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 2065 2070

15〜64歳は2025年を100として、2050年に82、2060年に70まで下がる。実数では4,126人から3,387人で、17.9%の減少になる。

一方で65歳以上は2050年に154、2060年には176まで上がる。実数では1,149人から1,764人で、53.5%の増加になる。

高齢化率は19.8%から31.4%へ。総人口がほぼ変わらないのは、減った現役世代とほぼ同じ数だけ高齢者が増えるからだった。

つまり「人口が維持される」という言い方は、この場合まちがってはいないが、通勤の話としてはほとんど意味がない。

駅に近いメッシュほど、減り方が大きい

5枚のメッシュを別々に見ると、もう一つ分かることがある。

250mメッシュ別 15〜64歳人口の増減 2025→2050 駅の真下 -29.1% 2025年 439人 東(塚越側) -18.6% 2025年 948人 北(川口市側) -18.3% 2025年 516人 南(中央3・4丁目) -16.7% 2025年 1426人 西(中央1丁目側) -12.8% 2025年 797人

駅の真下のメッシュが29.1%減で、いちばん減る。そこから離れるほど減り方が小さくなり、西側(中央1丁目側)は12.8%減にとどまる。

駅前は商業地で、住んでいるのは単身や共働きの現役層が中心になる。その層が最初に薄くなり、戸建てが多い外側は世帯が残る。地価の記事で見た「駅前だけが突出して上がる」構造と、人口では逆向きのことが起きている。

混雑の量ではなく、中身が変わる

ここまでの数字を並べると、こうなる。

指標2025年2050年変化
総人口(5メッシュ)5,816人5,613人-3.5%
15〜64歳4,126人3,387人-17.9%
65歳以上1,149人1,764人+53.5%
高齢化率19.8%31.4%+11.6pt

朝のラッシュを作るのは15〜64歳になる。この層が18%減るなら、朝の上り電車は今よりすいていく方向に働く。

一方で65歳以上が5割増えるなら、日中の利用は増える。買い物、通院、地域の用事。時間帯でいえば10時から15時になる。

同じ「駅の混雑」でも、朝の一点集中から、昼にかけてなだらかに広がる形へ変わっていく。これは駅の設備にも、周りの商業にも効いてくる違いになる。

この見立ての限界

3つ書いておく。

ひとつ目は、これが推計だということ。将来推計人口は国立社会保障・人口問題研究所の推計をメッシュに割り付けたもので、実績ではない。転入超過が続けば上振れするし、逆もある。

ふたつ目は、駅を使うのが周辺住民だけではないこと。蕨駅の乗降客12万人に対して、5メッシュの人口は5,800人しかない。乗る人の大半は、もっと広い範囲から歩いてくるか、バスや自転車で来る。今回のメッシュはあくまで駅至近の話になる。

みっつ目は、乗降客数と人口を直接掛け算していないこと。「15〜64歳が18%減るから乗降客も18%減る」とは言えない。高齢者も電車に乗るし、通勤以外の利用もある。ここで言えるのは、乗る人の構成が変わる方向だけになる。

まとめ

・蕨駅の乗降客数はピーク123,052人に対して2023年度107,842人。まだ88%止まり
・駅まわり5メッシュの総人口は2050年までに3.5%しか減らない
・ただし15〜64歳は17.9%減、65歳以上は53.5%増。高齢化率は19.8%から31.4%へ
・駅の真下のメッシュがいちばん減り、29.1%減。離れるほど減り方は小さい
・朝のラッシュを作る層が薄くなり、日中に動く層が厚くなる。混雑の量より中身が変わる

データについて

出典は国土交通省「不動産情報ライブラリ」経由の国土数値情報になる。将来推計人口は250mメッシュ(2070年まで、5歳階級)、乗降客数は駅別乗降客数のJR東日本ぶんを使った。年齢3区分は、データに含まれる0〜14歳・15〜64歳・65歳以上の集計値をそのまま合算していて、3区分の合計が総数と一致することを確認している。

なお、このAPIには道路の交通量や渋滞のデータは含まれていない。この記事で扱っているのは駅の利用と居住人口であって、道路の混雑ではない。

蕨の地価については蕨は「買い」なのかで書いている。地価データで街を読む特集はこちらにまとめています。